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バイオ医薬品分野の人材不足の克服へ 阪大が効率的なリスキリング等に繋がるオリジナル学習動画を公開

大阪大学大学院工学研究科パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所では、バイオ医薬品産業を担う人材育成の手助けとなる学習コンテンツをまとめたWebページを作成した。コンテンツは誰でも無料で視聴することができる。

この学習コンテンツは、成長分野であるバイオ医薬品の開発・製造領域での人材育成に貢献することが期待される。また、バイオテクノロジー人材のキャリア選択や能力把握、学ぶべき知識や身に付けるべき技術が明確になり、 効率的なリカレント教育やリスキリングが可能となる。

■バイオ産業を取り巻く人材不足問題 バイオ産業はここ数年急成長している。特にバイオ医薬品市場の成長は目覚ましく、2021年2月に経済産業省が発表した報告書「バイオテクノロジーが拓く<第5次産業革命>」では、2019年から2026年のバイオ医薬品の年平均成長率を9.6%と見込んでいる。

この急成長の裏で問題となっているのが、バイオテクノロジーを担う人材の不足。経産省報告書にも「バイオ技術を用いた製造分野においては、製造技術・プロセス開発に係る専門人材、製造の担い手であるオペレーターや、医薬品や食品の品質評価・品質保証・規制対応等に精通した人材の不足」が指摘されている。

バイオ産業メーカーのホームページには、技術コラムや動画が掲載されているものもあるが、〝もう少し詳しく知りたい〟〝関連の情報や書籍があれば知りたい〟〝専門的な知識が学べる場所が知りたい〟など、学び直しによってスキルアップを図りたい人にとっては得たい情報を適切に入手することが困難な状態だった。

この人材不足克服の一助とすべく、パーソルテンプスタッフと阪大大学院工学研究科は「パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所」を2021年9月に設立。バイオ医薬品、特に抗体医薬・遺伝子治療薬にかかわる研究者・技術者の育成システムづくりに取り組んできた。

■今回公開した学習コンテンツについて 今回作成したバイオ医薬品の開発・製造工程に関連する知識を学ぶことができるコンテンツをまとめたWebページの学習コンテンツページは次の4つに分かれています。

①【動画】バイオ医薬品開発・製造工程:抗体医薬・遺伝子治療薬の開発・製造にかかわる企業による技術解説動画を開発・製造工程別にまとめた

②【講義】バイオ医薬品開発・製造工程:リカレント教育に役立つ抗体医薬・遺伝子治療薬の研究開発や製造に関連する大学講義をまとめた

③【書籍】バイオ医薬品開発・製造工程:関連書籍を難易度別にまとめ、解説文も添えた

④【動画】バイオ実験基礎操作基本的なバイオ実験操作の動画をユーザー目線で作成した

これら①から③の情報を開発・製造工程別、難易度別に提示することで、必要な人材に適切な情報を効率よく届けることができるとしている。

また、④は、同協働研究所で制作したオリジナル動画(https://persol-biodx-arl.eng.osaka-u.ac.jp/self-learning/movie2/)。

バイオ実験の基本操作は、広く公開されている動画がほとんどないのが現状。そこでバイオ実験には欠かせないマイクロピペットマン操作と、浮遊細胞の継代作業について動画にまとめた。

このほか、ガラスベッセルのバイオリアクターを用いた細胞培養はバイオ医薬品のプロセス開発で多く利用されているにもかかわらず、操作方法をわかりやすく解説された情報がほとんどなく、口頭伝承の技術になっている。こうした現状を解消するため、バイオリアクターのセットアップから細胞培養までの解説動画も作成し、同ページで公開している。

これらの学習コンテンツは、企業でのOJTや、新たなスキルや知識を学びたい人やスキルアップを目指す人の自己学習での利用など、幅広い場面で活用してもらうことを想定している。コンテンツの内容は今後も随時更新する予定。