広島大学大学院医系科学研究科免疫学の保田朋波流教授らの研究グループは、エプステイン・バーウイルス(EBV)のLMP1というタンパク質をがん細胞に作らせると、がん細胞を攻撃するキラーT細胞の働きが高まり、がんの増殖を抑えられることを明らかにした。
「Spi-B」と「IRF1」という2つのタンパク質をがん細胞に作らせることでも、キラーT細胞の働きが活発になり、マウスの実験でがんの増殖を抑えられることが分かった。
今回の発見により、従来の治療薬が効かないがんに対しても、免疫の力を利用した新たな治療法につながる可能性があることから、今後、Spi-BとIRF1をがん細胞に安全に届ける方法の開発を目指す。
この研究成果は、ロンドン時間の8月25日に国際学術誌「Cell Reports」に掲載された。
今回研究グループは、EBウイルス由来の分子であるLMP1が持つ免疫活性化作用を手掛かりに、免疫から逃れたがん細胞をキラーT細胞が見つけられるようにする治療法の開発に取り組んだ。
LMP1をメラノーマや大腸がんなどのがん細胞に導入すると、キラーT細胞が、がんを認識するために必要なMHC classI分子(細胞内のたんぱく質の一部を細胞表面に示し、キラーT細胞が異常を見分ける手掛かりとなる分子)やCD80(免疫の世界で重要な役割を果たす抗原提示細胞表面のタンパク質)の発現が増え、キラーT細胞を活性化させた。
さらに、この作用を制御する因子としてSpi-BとIRF1を特定。Spi-BとIRF1をがん細胞に導入するだけでも、キラーT細胞の活性化とマウスでの腫瘍増殖抑制が確認された。
LMP1自体にはがんの増殖を促す作用もあるため、今後はSpi-BとIRF1をmRNAなどでがんへ届ける方法を検討し、免疫が反応しにくいがんへの新たな治療法につなげることを狙う。
EBウイルスは主にB細胞(体内に侵入した病原体を認識して抗体を作り、免疫記憶を形成する白血球の一種)に感染し、感染細胞の増殖を促す一方、感染細胞をキラーT細胞が見つけやすくする働きも持つ。
その中心となるLMP1は、MHC分子や共刺激分子を増やすことが知られていたが、B細胞以外のがんでも同じ作用が働くかは不明だった。 また、LMP1自体には細胞のがん化を促す作用があることから、そのまま治療に使用することは難しいため、研究ではLMP1の免疫活性化作用を担う分子を特定し、より安全な治療への応用可能性を検証した。
