国立極地研究所の佐藤和敏助教らの研究グループは、南極地域観測事業で昭和基地に設置されている大型大気レーダー(PANSYレーダー)で観測した風のデータが、南半球の大気 循環や「大気の川」の再現性と予報精度に与える影響を調査した。その結果、PANSYレーダーによる1時間ごとの風の観測データを数値予報システムに取り込むことで、南極大陸や南大洋の大気状態の再現 性に違いが生じ、その観測の影響が予報期間中に増幅しながら南半球の中緯度地域にまで広がることが 明らかになった。
さらに、南半球の中緯度に大雨や大雪をもたらすことがある「大気の川」に伴う水蒸気輸送の再現や予報にも影響し、一部の事例では予報精度が改善することが確認された。
これまでの研究では、PANSYレーダーの観測データを取り込むことで、南半球の中緯度に位置するオーストラリア西部に接近する夏季の低気圧の予報精度が改善することが示されていた。
今回の研究では、通常より高頻度の高層気象観測が実施された条件下でも、南半球の冬季に発生した複数の「大気の川」に対して、PANSYレーダーによる高頻度観測が有効であることを示した。
この研究は、南極での継続的な気象観測が、南極周辺だけでなく、北半球に比べて観測の少ない南半球の広い地域の天気予報の精度向上にも貢献する可能性を示している。この成果は、今年7月11日付の国際科学誌Scientific Reportsのオンライン版に掲載された。
