□研究のポイント
◎全国的にもツキノワグマの市街地での出没が多発している秋田市でインタビュー調査を行い、クマ対策に関わっている方や住民の方々のツキノワグマに対する印象や、クマ対策がどのように受け止められているかを分析。
◎ツキノワグマが人の生活圏に出没するようになった背景には、気候変動や餌資源の豊凶作など生態学的な要因に加え、人口減少や農地の放棄など社会的要因があると、住民のは認識していた。
◎秋田市内でも中心部と郊外の住民の間の認識の差、また、県外、特に「クマが出ない都会 の人々」との認識の差に対する発言が多く見受けられた。
◎出没地域での住民の日常がどのような影響を受けているかを把握することは、今後クマ対策を実施する上で重要となる。
東京農工大学農学研究院自然環境保全学部門の宮下絵夢フェリチタス准教授らの研究グループは、2025年の夏に秋田県秋田市で行政関係者と市民にインタビューを行い、同地でのツキノワグマの市街地への出没実態とクマ対策に対する意見データの収集と分析を行った。
調査の結果、住民は餌資源の豊凶作などの生態学的要因だけではなく、人口減少と農地の放棄などの社会的要因によって、人の生活圏に出没するツキノワグマが増加していると認識した。
また、緊急銃猟などの新たな管理対策に対しては、おおむね賛成の意見が多かったなか、駆除の判断をするべきかの段階に対しては意見の差がみられた。秋田市内でも中心部と郊外の住民との間で、クマ出没や管理対策に関する認識の差が確認された。
さらに、県外、特に「クマが出ない都会の人々」はクマが出没する日常に対しての理解がないという意見が多数出された。
日本国内だけでなく、世界各地でも地方の人口減少によって、人と野生動物の間の境界が曖昧になり、野生動物が人の生活圏に進出するケースが増加している。このような状況下、問題に直面する秋田市の住民の声から多くの教訓を得ることが期待される。
この研究成果は、「Ambio」(2026年10月22日付、オンライン先行掲載)に掲載された。