福井大学学術研究院医学系部門血管統御学の木戸屋浩康教授らの研究グループは、生体内にある脂質「リゾホスファチジン酸(LPA)」を皮膚の傷に1日1回塗るだけで、マウスの傷が有意に早く治ることを見出した。
LPAは血管を増やすだけでなく、血液が漏れにくい「成熟した血管」へと育て、傷に酸素を確実に届けることから、数だけを増やす従来の血管新生因子にはない特徴がみられた。
傷ができて3日後から塗り始めても効果が認められ、糖尿病や高齢に伴う「治りにくい傷」に対する新しい治療薬の候補として期待される。
この研究成果は、8月28日に国際学術誌「Inflammation and Regeneration」に掲載された。
高齢化と糖尿病患者の増加で、褥瘡(床ずれ)や糖尿病性足潰瘍などの「治りにくい傷」が身近な課題となっているが、傷を治すには新しい血管が酸素と栄養を届ける必要がある。
しかし、従来の血管を増やす薬(VEGFなど)では、つくられる血管が未熟で血液が漏れやすいという問題があった。
今回の研究では、マウスの背中の傷にLPAを1日1回塗ったところ、傷の閉鎖が有意に加速し、血管の量が約2倍に増えただけでなく、壁細胞が血管を覆い、血液が漏れにくくなって組織の酸素不足が解消。コラーゲンをつくる線維芽細胞も活発になり、リンパ管も増加していた。
LPAは血管を増やすだけでなく、血液が漏れにくい「成熟した血管」へと育て、傷に酸素を確実に届けることから、数だけを増やす従来の血管新生因子にはない特徴を持っていることが明らかとなった。
血管の「数」と「質」を同時に高める点で、LPAは既存の創傷治療薬とは異なる仕組みを持つ、新しい治療薬の候補と言える。
