東京理科大学の市川寛子教授らの共同研究グループは、自身が楽しくて気分が良いと他人のポジティブな感情に敏感になり、他者のかすかな笑顔への気づきを高めることを明らかにした。人が他者の表情を読み取る際、相手の表情だけでなく、読み取る側の気分も深く関係していることを裏付けた。
この研究成果は、7月20日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
研究では、短時間のコメディ動画を見ることでポジティブな気分が誘発されると、かすかな笑顔の認識精度が高まったことから、コメディ動画視聴のような手軽な気分転換が、日常のコミュニケーションにおいて、相手のポジティブな感情への気づきやすさを高める一助となる可能性を見出した。
表情を認識する能力は、社会的コミュニケーションにおいて重要な役割を果たす。特に、幸せな表情はポジティブな感情の信頼できる指標であり、互恵的な対人関係を育むのに役立つ。
同研究グループは、ポジティブな感情状態にある人が、中立的な感情状態にある人と比較して、かすかな笑顔をより適切に認識できるかを検討した結果、コメディ動画を視聴した後、マスクをしていない顔に浮かんだかすかな笑顔に気づきやすくなったことを発見した。
この効果は、かすかな悲しみの表情に対しては見られなかったことから、ポジティブな表情に特有のものと考えられる。
また、顔がマスクで隠れている場合には効果が見られなかったため、口元など表情を読み取るための手がかりが見えていることも必要条件と考えられる。
このような結果から、楽しい気分は他者のポジティブな表情への気づきを促す可能性があり、さらに、共感性や抑うつ傾向などの個人差にも着目し、表情認識を「顔を見る人の状態や特性」と結び付けて捉える視点も提示した。
今後、より自然な対人場面での検証を進めることで、教育・福祉・医療・職場など、人の感情理解が重要となる場面において、円滑なコミュニケーションを支援する方法の開発につながる可能性がある。