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読経を用いた健康プログラム効果 都健康長寿医療センター研究Gがエビデンスを発表 

□研究のポイント

◎寺院で読経を活用した健康プログラムを実施した結果、精神的ウェルビーイングの改善がみられた。

◎良い意味がある非日常語であるお経を、息を長く使い大きな声で唱えることで、嚥下機能や呼吸機能の改善がみられた。

◎文化のなかで親しまれてきた寺院における実践が、高齢期の心身の健康に役立つことが期待できる。

高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥性肺炎と言われ、主要な死亡原因となっているなか、介護現場では口腔機能や嚥下機能を支援する介入プログラムが広く行われている。特に、文化的に高齢者に親しみのある要素を用いたプログラムは受け入れやすく、続けやすい強みがある。

こうした背景を踏まえ、このほど東京都健康長寿医療センター 自立促進と精神保健研究チームの枝広あや子氏らは大正大学等と連携し、読経を用いた健康プログラムを開発した。今回の研究は、寺院で行う読経を用いた健康プログラムでの地域住民の嚥下機能、呼吸機能、精神的健康に及ぼす影響を明らかにする目的で行われたもの。

この読経プログラムは増上寺および護国寺で実施され、週1回1時間のセッションを全7回行なう集合型プログラムで構成し、セッションのない日は自宅で練習を行った。今回は、比較的短い時間で唱えられ、かつ多くの宗派で使われる『般若心経』が使用された。また、口腔機能の維持向上には“良い意味があるけど日常的に発さない語句”を一生懸命声に出すことが効果的なため、ふりがなを付けた経文を大きな文字で印刷したテキストを用意し、現代語訳や解説も加えて提供した。

同プログラムでは、正しい姿勢で身体を楽器のように使い、なるべく息を長く、口を大きく使う唱え方が指導された。さらに、読経の効果を高めるため、セッション冒頭には呼吸と口腔機能に着目した準備体操も行われた。

このようにして実施された同プログラムで、その前後に測定した数値を反復測定混合効果モデル(mixed models for repeated measures: MMRM)を用いて解析したところ、精神的健康、嚥下機能、呼吸機能に対する各効果において、それぞれ有意な結果が示された。

日本の座禅がルーツのひとつである「マインドフルネス」は医学界で広く行われており、日本仏教では読経が坐禅と並ぶ中核的な実践の一つとなっている。

従来の研究では、読経を「聴く」ことが死別に関連するストレスを軽減する可能性が示唆されているものの、「実際に唱える」ことの生理的・心理的効果については、定量的手法を用いた検討が十分になされていなかった。

一方、近年は寺ヨガや子ども食堂などの形態で、社会貢献を志向する仏教寺院が現れているほか、寺院で行う介護者のための集いが地域包括ケア支援センターなどから高く評価されている。

今回の研究はこうした視点に基づき、寺院で行われる伝統的実践である読経を、精神的ウェルビーイングおよび呼吸・嚥下関連機能の双方の向上を目的とした、地域ベースの健康プログラムに組み込むことへの可能性が示されたといえる。