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身体を冷やしてマラリア原虫の増殖を抑制~体温コントロールによる新たなマラリア制御の可能性~ 東京慈恵会医科大教授らが解明

東京慈恵会医科大学の小田川太一助教と嘉糠洋陸教授らは、低温環境がマラリア原虫の遺伝子の働きを弱め、赤血球に侵入する効率を低下させた結果、原虫の増殖 が抑えられることを明らかにした。加えて、体温の低下と抗マラリア薬を組み合わせることで、薬剤単独よりも原虫の増殖を強く抑えられることを動物モデルで示した。これは、体温コントロールと抗マラリア薬の併用効果を示した世界初の成果といえる。今後、患者の体温をコントロールすることで既存の薬剤との併用治療をはじめとした新しいアプローチの治療法開発につながることが期待される。この研究成果は5月15日に「Parasitology International」誌に掲載された。

■研究のポイント 

◎33℃まで冷やされたマラリア原虫では、発現量が50%以下に低下した遺伝子が認められ、その中に赤血球への侵入に関わる遺伝子が多く含まれていた。

◎マラリア感染モデル動物の体温が、低体温療法時の体温に相当する35℃まで 低下した条件で、原虫の増殖が約62%抑制されることが判明した。

◎動物モデルにおいて、抗マラリア薬と低体温を組み合わせることで、薬を単独で 使用した時よりマラリア原虫の増殖を約61%抑えることに成功した。

◇      ◇

マラリアは蚊(ハマダラカ)に刺されることでヒトの体内に原虫という小さな寄生虫が入り込んで感染する重大な感染症で、年間2億人以上が感染、60万人以上が死亡しており、世界3大感染症の一つとされています。高熱や頭痛、貧血などのほか、特に熱帯熱マラリア原虫は、脳マラリアなどの重篤な症状を引き起こすことが知られている。

これまで、宿主の発熱といった高温環境が原虫に与える影響については研究がされていたが、低温環境の影響については十分に解明されていなかった。

今回の研究では、ヒトマラリア原虫の培養系やマウスを用いたマラリア感染モデルによって、低温環境がマラリア原虫に与える影響を解析。その結果、低温環境下では原虫の赤血球侵入効率が著しく低下し、それに伴い原虫増殖が抑制されることを明らかにした。

加えて、RNA-seq解析により、低温ストレスに曝露されたマラリア原虫では、赤血球への侵入に関連する遺伝子の発現が低下す ることが明らかとなった。

さらに、低温環境と抗マラリア薬アーテスネートを組み合わせることで、単独処理よりも強い増殖抑制効果が認められた。

これらの成果は、温度という宿主環境因子がマラリア原虫の病原性を制御しうることを示しており、宿主環境を標的とする新たなマラリア制御戦略につながる可能性がある。

■今後の展開

今回の研究成果を基盤に、低体温療法の重症マラリアに対する補助療法としての応用可能性を検討する。今後は、低温環境が脳マラリアなどの重症症状や病態進行に与える影響の解明を目指す。