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阪大が世界の蛋白質構造データバンク(PDB)を運営して20年- 世界のPDBデータの4分の1相当の5万件に到達

大阪大学蛋白質研究所の日本蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank Japan:PDBj代表 栗栖源嗣教授)では、アジア地区で解析された全てのタンパク質構造情報をアジアの代表機関として蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank:PDB)※2に登録してきた。国際的なデータ処理基準を共有して、欧米の2拠点で編集したデータと相互にデータを事前交換することで日米欧ともに完全に同じデータとして毎週水曜日(日本時間午前9時)に最新エントリーが更新される。

阪大でのタンパク質構造データの登録活動は2000年に始まった。欧米拠点と共同で2003年に「国際蛋白質構造データバンク(worldwide Protein Data Bank: wwPDB)」プロジェクトを立ち上げた。

この国際プロジェクトの合意の下で、世界で一つのデータバンクとして共同運営する体制が構築された。国際プロジェクトwwPDBが設立されて20年の記念の年に、阪大でデータ登録されたデータ件数の合数が全世界の約4分の1に相当する5万件に到達し、二重の意味で節目の年を迎えた。

 蛋白質構造データバンクは実験的に決定した生体高分子の3次元構造を保存する世界で唯一のデータベース。世界中で毎日200万件以上がダウンロードされ、基礎研究から創薬などの応用まで幅広い研究に活用されている。

阪大蛋白質研究所の日本蛋白質構造データバンクを含む日米欧の地域拠点が、国際蛋白質構造データバンクという国際プロジェクトを組織して共同で登録・維持・管理している。PDBjはwwPDBの設立メンバーであり、20年以上にわたりアジア・中東地区からのデータ処理・登録を担当して、全てのPDBデータを大阪大学から世界に発信(https://pdbj.org)している。

世界中の研究者が構造解析したタンパク質の構造情報は、研究者の所属する国で自動的に日米欧のいずれかのサイトに割り振られて事前にデータ登録される約束になっている。登録されたデータは、PDBの各地域拠点で専門家による編集・検証が行われます。通常、編集・検証済みのPDBデータは、該当の研究論文が発表されるまで非公開とされ、実験のオリジナリティーが担保される仕組みとなっている。

タンパク質の構造情報は、創薬研究などに積極的に活用される基盤情報であり、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が持つタンパク質の構造情報も創薬に活用された。塩野義製薬が開発したエンシトレルビルフマル酸(商品名ゾコーバ)もタンパク質の構造データを基に開発された。