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阪大産研が企業と認知症診療支援のプログラム医療機器を事業化 医学的評価の特許をもとにAIアプリの独占的開発

大阪大学産業科学研究所は、㈱エクサウィザーズ(東京都港区)との間で、認知症診断を支援するAIアプリケーションの医療機器の独占的開発と、将来的な販売について基本合意した。阪大産研が保有する関連特許とエクサウィザーズが保有する独自のAI技術を活用し事業化に向け協力し、認知症の早期診断・治療という社会課題の解決につなげる。

■共同研究の背景

AIアプリケーションなどのソフトウェアで実装する医療機器は、プログラム医療機器

(SaMD:Software as Medical Device)と呼ばれ、特にAIを搭載したSaMDは米国、ドイツ、インドなどで開発に向けた環境整備や実用化が進んでいる。SaMDは従来の医療機器と比較して比較的早期にかつ低コストに開発でき、スマートフォンなどのウェアラブルデバイスに搭載できる。こうした点から医療機関だけでなく、日常生活の家庭における疾病の予防や早期発見の進展が期待されている。一方、日本では開発の難易度や海外との諸制度の違いから、医療機器としての申請や承認の数で後れをとっ

ているのが現状。

今回の取り組みでは、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)での研究を通じて阪大産研の八木康史教授が開発してきた認知症の判定モデルに関する特許について、エクサウィザーズが独占的な実施許諾を受ける。そのうえでエクサウィザーズと阪大産研が連携してAIアプリケーションを開発する。スケジュールとしては2023年夏までに規制当局との薬事相談を開始し、医療機器としての早期承認を目指す。実現すると、認知症診断分野では初のSaMDになることが期待される。

■両者の役割

エクサウィザーズは、創業時より一貫して AI を利活用したサービスの戦略立案・開発・実装などの事業を展開している。ヘルスケア分野では製薬会社、大学・研究機関、医療機関、IT企業などと多くのプロジェクトを実施しており、蓄積した独自のAIアルゴリズムやデータプラットフォームを活用し、拡大している多様なデータに対応している。

今回のプロジェクトではこうしたリソースや知見を生かし、阪大産研の持つ特許技術のSaMDとしての実装に共同で取り組む。

エクサウィザーズは阪大産研特許権を保有する特許について独占的な実施許諾を受けたことに伴い、当該特許を利用したSaMDの販売についても独占的に行うことができる。

阪大産研は八木教授らが発明し同研究所が保有する特許を今回のプロジェクトに提供し、SaMDとしての実装に向けた知見を提供する。

同特許はデュアルタスクシステムという独自の方法を用いたもので、二つ以上の作業を同時に行うことで簡便かつ高い精度で認知症の診断支援を可能にするもの。デュアルタスクシステムによって、数分程度の簡単な運動とテストを同時に行い、認知症や軽度認知障害(MCI)、健常者の判別、MCIから認知症へ移行する予兆の検知に取り組む。