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中央大が香害をテーマにしたパネル展「化学物質過敏症・香害・SDGs」を首都圏で初開催―「化学物質過敏症」患者の実体験から生まれたパネル展―

中央大学は9月21日~10月31日、首都圏では初となる「香害」をテーマにしたパネル展『化学物質過敏症・香害・SDGs』を多摩キャンパスで開催する。このパネル展は今年5月に大阪で開催されて反響を呼び、それを知った中央大教員が、公害をテーマにしたオムニバス講義の関連企画として計画した。誰でも事前申込不要で無料観覧ができ、観覧者にはオリジナルキャラクター「FAN-CYU(ファンチュー)」のステッカーがプレゼントされる。

中大文学部では毎年「プロジェクト科目」というオムニバス講義を行っており、2023年度後期は「今、そこにある公害」というテーマで、現代社会のさまざまな公害について、学内外の講師を招き多角的に分析している。

このなかの一つとして取り上げる「香害」は、柔軟剤などの日用品に含まれる化学物質によって引き起こされるもので、ここ数年被害者が急増し、新たな公害として社会的に注目されている。

パネル展は、大阪・堺市の化学物質過敏症の患者が個人で企画・制作したもので、今年5月に同市総合福祉会館で開催されると大きな反響を呼び、新聞やテレビでも話題となった。今回、「過敏症・香害を正しく知る委員会」(当該患者と家族からなるパネル制作の主体)からパネルが無償提供されることになり、首都圏での初開催が実現する。

「香害」は、工場などからの排気・排水によって引き起こされる公害とは異なり、一般消費者が加害者にも被害者にもなることが特徴。被害の場所は家庭、職場、公共交通機関など幅広く、大学をはじめとする教育現場も含まれる。

人工香料や抗菌・消臭成分を包んだマイクロカプセルが衣服に付着し、時間差をおいて破裂することで、いつでもどこでも化学物質が揮発し、頭痛や吐き気などの健康被害が生じる。また、破裂したマイクロカプセルの破片は空気中に浮遊して呼吸器に取り込まれ、長期的な健康被害の恐れがあるだけでなく、洗濯排水から流出して河川や海の水を汚染し、より深刻な環境破壊をもたらす。

パネル展は、学生・教職員だけでなく、市民一人ひとりが自分の生活スタイルを見直すきっかけとなり、持続可能な社会の実現に向けて踏み出す契機となることを目指す。