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血管腫は切って治す時代から「薬で治す」時代へ 阪大と岐阜大研究Gが原因遺伝子の役割を解明

大阪大学と岐阜大学の研究グループは、ヒト静脈奇形検体を用いて、静脈奇形の発症にかかわる原因遺伝子の違いにより臨床症状や顕微鏡像が異なること、原因遺伝子の種類にかかわらず細胞の生存などに影響する「PIK3CA(PI3K)/AKT/mTOR経路」が活性化していることを見いだした。新治療薬の治療根拠となるかもしれない。

血管が増えた病気である血管腫は、がんと同様にDNAに異常が起こり発生する。血管腫の中で最も発生頻度の高い「静脈奇形」について調査。世界最大数のヒト静脈奇形114症例を収集し、血管維持に重要な「TEK遺伝子」とがん発生に関与する「PIK3CA遺伝子」の異常とその役割について検討した。

研究グループは次世代シーケンサーを用いた最新の研究技法を用いて、静脈奇形の「原因遺伝子」「RNA」「たんぱく質」「臨床症状」「顕微鏡像(病理所見)」を包括的に観察した。

結果、病気の発生に関わる原因遺伝子の種類によって、患者の症状や顕微鏡観察で分かる形態像などが異なることを突き止めた。この成果は、静脈奇形の初の治療薬であるmTOR阻害薬「シロリムス」の治療根拠となることや、新たな治療薬開発へつながることが期待される。

研究グループは「原因遺伝子ごとの臨床症状や顕微鏡像の特徴を組み合わせることで、将来的に原因遺伝子ごとの治療薬開発がさらに進んだ際には、遺伝子検査が困難な施設においても適切な治療薬を選択できるようになる」とコメントしている。