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乳がんの薬剤抵抗性を引き起こすメカニズム 慶応大研究Gが発見 代謝特性を利用した新規治療標的の開発に期待

慶應義塾大学医学部医化学教室の山本雄広専任講師と、医学部外科学(一般・消化器 教室の林田哲専任講師らを中心とする研究グループは、公益財団法人実験動物中央研究所(神奈川県川崎市)の末松誠所長(同大学名誉教授)との共同研究で、乳がん細胞が化学療法に対する抵抗性を獲得するメカニズムを新たに発見した。

乳がんは発現する遺伝子の違いで性質が異なるサブタイプに分類され、それぞれに治療方針が異なる。なかでもトリプルネガティブ乳がんは全乳がんの約10%強を占めているが、悪性度が高く予後不良で、抗がん剤治療の過程において耐性を獲得することが知られている。

今回、共同研究グループは、トリプルネガティブタイプの乳がん細胞を用いた実験で、標準治療として使用される抗がん剤パクリタキセルに耐性を持つ細胞では、ブドウ糖から エネルギーを産生する経路である解糖系から途中で分岐するセリン生合成経路が活性化し、結果としてがん細胞の増殖に必要な脂肪酸の活発な合成が起こっていることを見出した。

さらに細胞実験や動物実験で、この経路を遮断することによって乳がん細胞の薬剤耐性を解除することに成功した。

この知見をより発展させることで、組織診での乳がんの悪性度の判定や、乳がん細胞の代謝を制御することにより、従来よりも治療の選択肢が広 がる可能性などの利点が期待される。