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化学品⽣産のCO₂排出量と製造コストを最⼩化 産総研が溶媒の評価⽅法開発 溶媒選択の最適化に貢献

産業技術総合研究所は化学品を⽣産する全⼯程を通して二酸化炭素(CO₂)排出量と製造コストを最⼩化する溶媒を、シミュレーションにより選択や評価できる⽅法を開発した。反応開発の段階から化学品⽣産プロセス全体のCO₂排出量と製造コストを最⼩化するため、溶媒選択の最適化につながるとしている。

収率が良くても反応⼯程後の抽出効率が低い場合や使⽤した溶媒のリサイクルに多くのエネルギーが必要な場合、化学品⽣産プロセス全体では最適でないことがある。化学品の⽣産プロセス全体を考慮した溶媒の選択は、⽣産量が多い基礎化学品⽣産では進んでいるが、少量⽣産の機能性化学品⽣産ではほとんど⾏われていなかった。

反応溶媒の種類が変わると、収率や蒸留での分離の仕⽅も変化する。そこで、それぞれの特徴に合わせて、使⽤した溶媒のリサイクルプロセスを設計した。プロセスシミュレーションでは、反応物や炭酸塩などの固体成分は含めず、溶媒のみに着⽬して計算している。

その結果、反応収率の⾼い溶媒がCO₂排出量と製造コストの点で優れている結果となったが、シミュレーションではトルエンの反応収率が向上したと仮定した場合、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)や2-プロパノール(IPA)を⽤いるよりもCO₂排出量と製造コストを下げられる可能性があることも⽰した。

研究グループは今後について「反応溶媒だけでなく抽出溶媒など適⽤範囲を広げていき、反応開発や触媒開発の指針の1つとして貢献できる技術開発に取り組みたい」としている。