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胃酸分泌抑制は胃がんの発生を助長 東大と朝日生命研究所が調査、世界初発見

東京大学と公益財団法人朝日生命成人病研究所の研究グループは、胃酸分泌抑制薬「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB)」の使用がピロリ菌除菌後に発症する胃がんのリスクを高めることを世界で初めて明らかにした。

胃がんの主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌の慢性感染であり、除菌することにより発生を一定程度予防できると考えられている。だが、その後の患者の中にも経過とともに胃がんが生まれることがあり、原因や危険因子に関する研究が進められている。

1100万人規模のデータから、5万4055人のピロリ菌除菌後患者を抽出し、PCAB内服群に対して、胃酸分泌を促進する「ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)」群、分泌抑制薬「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」群のピロリ菌除菌後の胃がん発症リスクを比較した。

それによると、5年経過後の胃がん累積発症率はPCAB使用者で2.36%、H2RA使用者で1.22%だった。生存時間分析を行ったところ、PCAB群はH2RA群と比較して除菌後胃がん発症リスクが上昇していた。

一方、PCAB群とPPI群を比較すると、除菌後胃がん発症リスクに有意差はなく、両薬剤は同等のリスクを有すると考えられた。

研究グループは「PCABを長期処方される患者は世界中でさらに増加する」と指摘。「PCABの長期使用のリスクに関して、国際的な大規模の検討がなされるとよい」と訴えている。