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ヒトES細胞から咽頭弓様の構造形成 京大研究Gが手法確立 新たな再生医療に発展していく可能性

京都大学の永樂元次教授らの研究グループは、ヒト多能性幹細胞から神経堤細胞を多く含む細胞凝集体を作製した。そしてそれを胚形成過程で作られる「咽頭弓(いんとうきゅう)」様の遺伝子発現パターンを有する細胞集団へと分化させる手法を確立した。新たな再生医療の細胞材料の開発などに発展していく可能性もある。

さまざまな細胞へと分化できるヒト多能性幹細胞の性質を利用し、将来顔となる咽頭弓に類似した組織を試験管内で作製することにより、顔の初期発生について研究する為のモデルを確立することを目指した。

グループは未分化なヒト多能性幹細胞からなる細胞凝集体を、咽頭弓を構成する主要な細胞である神経堤細胞を豊富に含む状態へと分化させる方法を探索。その結果、培養開始から5日で、約7割の細胞が神経堤細胞へと分化する培養方法を発見した。

咽頭弓の細胞と類似した発現パターンを示す細胞集団へと分化させる条件を探したところ、誘導した細胞凝集体は上顎(じょうがく)を形成する「上顎弓」に類似した集団へと分化する能力を有した。実際の発生過程において下顎(かがく)の分化に必要なシグナル因子を添加することで、下顎のもとである「下顎弓」に類似した細胞集団へと分化可能であることを見いだしている。

また、下顎弓への分化を誘導するシグナル因子を培地中に一時的に添加することで、1つの細胞凝集体に上・下顎弓に類似した細胞集団を同時に誘導することができることを明らかにすることに成功した。

これらの細胞集団は凝集体内で交わることがなく、独立した区画を形成し凝集体内での領域分けが起きていたという。グループは「この現象は、顔の初期発生過程で生じる上顎原基と下顎原基のパターニングを再現している可能性があり、その詳細な解析により、顔の初期発生過程の解明につながる可能性がある」としている。