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自己免疫疾患「全身性エリテマトーデス」と「シェーグレン症候群」 京大×理研が発症メカニズムの一端を解明

京都大学と理化学研究所の研究グループは、直鎖状ユビキチン鎖(直鎖)を生成することで免疫細胞の活性化に重要な役割を果たす複合体ユビキチンリガーゼ「LUBAC」が、自己免疫疾患「全身性エリテマトーデス(SLE) 」と「シェーグレン症候群(SS)」の発症に関わることを明らかにした。

研究ではLUBACの構成要素の1つ「HOIL-1L」の酵素活性欠失によって、LUBACの機能が高まったマウスを観察。メス優位に角膜傷害を示すことを見つけた。さらに、免疫細胞の異常集族を伴う涙腺傷害や特徴的な自己抗体が検出され、シェーグレン症候群と診断できる所見を得ている。

人と同じくHOIL-1L活性欠失マウスでは、メスに多くSLEに特徴的な免疫複合体沈着性腎炎(ループス腎炎)や自己抗体も検出された。加えて、両疾患に目立つ免疫グロブリンの上昇、リンパ節腫脹も認められた。LUBACの機能上昇により直鎖状ユビキチン鎖シグナルが増強することでマウスではSLE及びSS様の疾患発症が明確になった。

グループは先行研究で1アミノ酸の変異でHOIL-1Lの酵素活性が消失することがあること、酵素活性が低下するHOIL-1Lが1遺伝子座あるだけでマウスにおいて自己免疫疾患類似症状を呈することを見いだしていた。

そのため、人でもHOIL-1Lの1アミノ酸変異がSLEやSSの発症に寄与する可能性を想定して、HOIL-1L/RBCK1遺伝子の1塩基多型/変異 (SNP/SNV)を検索した。

その結果、HOIL-1LのR464H変異を惹起するSNVがHOIL-1Lの酵素活性が低下させることでLUBACの機能を高めることを突き止めた。さらに、R464H変異を引き起こすSNVがSLE患者に集積することを発見し、HOIL-1L/RBCK1がSLEの新規疾患感受性遺伝子であること、LUBACの機能活性がSLEの発症に寄与することを世界で初めて示した。

研究グループは「我々の研究成果が今後SLEで苦しむ患者に少しでも福音をもたらしてくれればと期待する」とコメントした。