理化学研究所の林茂生チームリーダーらは、生物の管状組織を支えるリング状の細胞骨格が作り出される仕組みを解明した。人工血管作製など医療への応用が期待されるという。24日付の科学雑誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」のオンライン版に掲載されている。
研究チームは、ショウジョウバエ胚に直径数マイクロメートルの気管が形成される際、リング状の細胞骨格が等間隔に並ぶ蛇腹に似た細胞骨格パターンが現れることに注目した。
顕微鏡で過程を観察したところ細胞骨格を構成する「アクチン」が、ナノスケールの集合体を形成し、それらが融合することでパターンが作られることを発見した。
このプロセスに必要な分子を特定し、それらの性質を反映させたシミュレーションをコンピューターで行ったところ、細胞骨格パターン形成の全ての工程を再現することに成功している。
研究チームこれら結果から管状組織を支える細胞骨格は、ナノクラスターの自発劇な動きから生み出されるという結論を出した。
林チームリーダーらは「今後、血管など他の管構造や、心臓などより複雑な管状組織における細胞骨格のパターン形成において、ナノクラスターを基軸とした理解が進むと考えられる」とコメントしている。