北海道大学の中川雅夫助教らの研究グループは、難治性T細胞性悪性リンパ腫「成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)」のPD-L1発現機序を解明した。ATLLに対する今後の免疫療法開発に期待が寄せられている。
ATLLは日本人での発症頻度が比較的高いT細胞性の悪性リンパ腫。その中でも、ATLLは既存の治療に対する反応性が特に乏しい疾患で、新しい治療法の開発が求められている。
新規ゲノム編集技術「CRISPR-Cas9(クリスパーキャスナイン)」を用いてATLL細胞株内の約2万種類の遺伝子をノックアウトさせ、どの遺伝子がATLL細胞のPD-L1の発現に重要な役割を担っているかを調査した。
その結果、NEDD8を標的たんぱく質に結合させる「NEDD化」関連遺伝子の発現低下によりPD-L1発現が上昇することを見いだした。この成果に基づいてNEDD化関連分子の阻害薬「ペルボネジスタット」をATLL細胞に使用したところ、PD-L1発現が上昇することに加えて細胞傷害作用を併せ持つことも明らかにした。
中川助教らは「これらの発見からぺルボネジスタットとPD-L1を標的とした免疫療法の併用が有効である可能性が示唆された」とし、実際にぺルボネジスタットと抗PD-L1 抗体もしくは抗PD-L1CAR-T細胞を組み合わせたところ、ATLL細胞を効率的に排除できることを突き止めたという。
「本研究はPD-L1を標的とした2つの免疫療法による治療方針の可能性を示し、ATLLに対する今後の免疫療法開発の進展が期待できる」とコメントしている。