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クライオ電子顕微鏡による口紅本来の構造 コーセー×東北大が観察方法を開発 口紅本来の微視的構造を可視化

㈱コーセーは東北大学の陣内浩司教授らとの共同研究により19日、低温で観察できる「クライオ電子顕微鏡」を用いてスティック型口紅の微視的構造を成分の欠損や構造変化をさせることなく観察する方法を開発したと発表した。この技術は口紅本来の微視的構造を可視化できることから、製剤開発や品質保証に有用であるという。

従来の観察方法は前処理で液状油を取り除く必要があり、口紅本来の構造を観察することができなかった。研究チームは液状油部分も含めた口紅本来の構造を観察すべく、クライオ電子顕微鏡に着目。その技術を応用して口紅本来の微視的構造の分析に取り組んだ。

ワックスと液状油のみで単純な処方の口紅を作成し、これまでの水を含む試料を観察するクライオ電子顕微鏡の条件で観察を試みた。だが、電子線による試料への熱ダメージが発生して明瞭な観察像は得られなかった。

研究チームは、条件検討を重ねて熱ダメージを抑えて観察できる条件を見つけ出した。口紅本来の微視的構造を観察。ワックス部分で縞状の構造が確認している。次に、口紅には欠かせない顔料を加えた口紅のクライオ電子顕微鏡で確認した。

その結果、顔料を加えることでワックス部分の構造が細かく分岐し、また厚みが薄くなることが分かった。このことから、顔料によりワックスの構造が変化し、脆弱になることで口紅全体の硬さが低下する可能性が示唆されている。

研究グループは「今後このような構造変化を制御する方法が見つかれば、これまで実現できなかった色彩や形状の口紅の開発が可能になることが期待できる」としている。