文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
神経伝達物質を分泌する「キスペプチンニューロン」 生殖能力に必要であると世界初証明(名大)

名古屋大学の長江麻佑子学振特別研究員らの研究グループは生理学研究所との共同研究で、神経伝達物質であるダイノルフィン受容体を分泌する「キスペプチンニューロン」の亜集団が、正常な卵胞発育や排卵に必要であることを世界で初めて明らかにした。家畜の繁殖障害の治療や人の不妊治療の知識基盤となり得る知見を得ている。

脳領域に分布するキスペプチンニューロンはダイノルフィン受容体が発現しているが、これらのニューロンにおけるダイノルフィンの役割は解明されていなかった。

グループは、研究のため遺伝子組換えラットを作製。ダイノルフィン受容体を発現するキスペプチンニューロンの亜集団においてのみ、後天的にキスペプチン遺伝子を欠損させた。その結果、視床下部弓状核キスペプチンニューロンの数は約3%に、前腹側室周囲核のキスペプチンニューロンの数は約50%に減少した。

ラットはわずかに残ったキスペプチンニューロンでも繁殖可能であったが、野生型ラットと比べて性周期が長くなり子どもの数も減った。さらに、ラットは性腺刺激ホルモン分泌能を有するものの明瞭なパルス状分泌は消失し、サージ状の分泌は半減していた。

これらの結果から、研究グループはダイノルフィン受容体を発現するキスペプチンニューロンの亜集団が、卵胞発育や排卵を制御していることを世界で初めて示した。

分析によると家畜の繁殖障害の約5割と人の不妊症の約3割は、視床下部の繁殖中枢の機能不全によると考えられている。研究グループは「本知見は家畜の繁殖障害の治療、ヒトの不妊治療などへの応用ができる」とした。