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犬の尿由来細胞からiPS細胞の安定生産 大阪公立大教授らが世界初成功 作製効率が120倍に

大阪公立大学の鳩谷晋吾教授らの研究グループは、イヌiPS細胞の作製効率を向上させる6つの初期化遺伝子を特定。イヌの尿由来細胞からiPS細胞を作製した。6遺伝子を尿由来細胞に導入すると、作製効率が約120倍に上昇すると分かった。また、必要不可欠であったフィーダー細胞を用いないイヌiPS細胞の作製に世界で初めて成功した。

研究ではまず、犬と人の初期化遺伝子の配列を比較。その結果、一部の初期化遺伝子において配列が類似していないことが分かり、イヌiPS細胞の作製に有効だと考えられる6遺伝子を特定した。そこで、遺伝子の運び屋「ベクター」を用いて6遺伝子をイヌ線維芽細胞に導入。フィーダー細胞と一緒に培養したところ、イヌiPS細胞の作製効率が上がった。

続いて、痛みを伴わず簡単な手技で採取できる細胞から効率よくiPS細胞を作るため、線維芽細胞以外の細胞を探索し、尿から採取できる「尿由来細胞」に着目。犬の尿から採取したイヌ尿由来細胞に、6つのイヌ初期化遺伝子を導入したところ非常に高い効率でイヌiPS細胞を作製することに成功した。

最後に、これらの技術を応用してフィーダー細胞を使用せずにイヌ体細胞の初期化を試みた。その結果、作製効率は低下したが世界で初めてイヌiPS細胞をフィーダーフリー条件で生み出すことに成功した。

研究グループは「今後、世界中の研究者へイヌiPS細胞を提供することで、獣医再生医療研究への応用や遺伝性疾患のメカニズム解明、新たな治療薬の開発への応用が期待される」としている。