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温暖化による分布拡大は在来種にどう影響するのか? 近畿大研究員らがシオカラとベニトンボで研究

近畿⼤学の⽯若直⼈研究員らのグループは国⽴環境研究所などと共同で、温暖化で分布を拡⼤させた種(分布拡⼤種)が在来種にどのような影響を及ぼすのかについて、トンボをモデルに評価した。

分布拡⼤種の⽣態影響を迅速かつ正確に評価する必要があるが、そうした種が在来種に及ぼす影響が温度上昇でどのように変化するかを調査した研究はこれまでなかった。

研究グループは、分布拡⼤種のうち北半球側に⽣息する種を「分布北上種」として着⽬し、⽣態系への影響を評価した。具体的には、台湾から⽇本に侵⼊して以降、急速に分布を拡⼤させる「ベニトンボ」を分布北上種のモデルとして、また、ベニトンボの⽣息環境やエサ資源の重複が⽰唆される「シオカラトンボ」を在来種のモデルとしてそれぞれ選んだ。

エサをめぐる両種の関係性を評価するため、トンボの幼⾍であるヤゴを⽤いて、計3温度帯(27度、29度、31度)で各種が単独で存在する場合の採餌(さいじ)量を基に、両種が対峙した場合の採餌量の変化や敵対的な⾏動の有無などについて評価した。

その結果、同⼀環境にベニトンボがいても、シオカラトンボがエサを採った量は基準温度である27度が維持される限り変化せず、温度が上昇するにしたがってシオカラトンボの採餌量は明確に減少していった。

⼀⽅で、ベニトンボは温度上昇に伴い増加し、シオカラトンボから受ける負の影響がないということが分かった。ここから、さらなる温暖化の進⾏は分布北上種から在来種に対する負の影響を強め、結果的に⽣態系の改変をもたらす可能性が⽰唆されている。

研究グループは「野外環境や他の⽣物でも同様の検証を⾏って結果の共通性や相違性を明らかにすることで、温暖化で分布拡⼤する⽣物がもたらす⽣態学的脅威の法則やメカニズムの真相究明につながる」と説明している。

温暖化進⾏により分布拡⼤種が在来種に与える影響
(写真提供・⼭元駿介氏)