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新光線力学療法でオートファジーの働きでがん細胞を破壊 筑波大教授らが解明

筑波大学の重川秀実教授らは、新しい治療法である光線力学療法(PDT)に新奇光感受性物質ポリフィリポプロテイン(PLP)を使って正常細胞とがん細胞への効果を観察した。結果、PLPはオートファジーの仕組みによりがん細胞を選択的に破壊できると発見。これは効果的ながん治療につながる成果だという。

PDTはほかの治療法に比べて体への悪影響が少ないとして注目されている新たな治療法だ。これは体内に光感受性物質を投与して、がん細胞を壊死させるというもの。研究では、近年開発されたPLPに注目。高い治療効果を持つ光感受性物質だが、その仕組みは分かっていなかった。

研究チームは正常細胞のラット胃上皮細胞株「RGM1」とがん細胞であるラット胃粘膜由来がん様変異体「RGK1」を使って、PLPによるPDTの効果の違いを顕微鏡で観察した。その結果、細胞膜小胞「ファゴソーム」の膜上にPLPが蓄積することが明らかになった。

ファゴソームは細胞内の異物やたんぱく質などを分解して再利用するオートファジー機構の初期に生成される。増殖が難しいがん細胞が飢餓状態にあるとオートファジー機構が進む。

そこでPDTを行うとRGK1ではファゴソーム膜が破れ、内容物が細胞内に拡散して細胞は壊死した。一方、RGM1では小さなファゴソームが合体して大きくなり、ファゴソームは破壊されなかった。

重川教授らは「PLPががん細胞を選択的に壊死させて高い治療効果を生じさせるのは、飢餓状態にあるがん細胞がオートファジー機構を進行させ、分解された内容物を用いてがん細胞を壊死させるユニークで新しいメカニズムであることが明らかになった」と説明している。