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ダケカンバの苗木の成長率は地域によって異なる 他地域も調べる必要性指摘 筑波大研究Gが発表

筑波大学の津村義彦教授などの研究グループは8日、11カ所から採集したダケカンバの苗木の成長を比較した結果、異なる特徴が現れたと発表した。遺伝に原因があると考察され、ほかの地域のダケカンバも調査する必要性を指摘している。

ダケカンバは日本の高山に分布する樹木だ。研究グループは11の天然分布地域から苗木を採集し、全国8カ所で生育させた。実験ではその成長を比較して、産地集団の気候条件や遺伝的特性との関連を調査した。

11の産地集団のうち、中央アルプスの森林限界に位置する集団の気候条件に位置する集団は、気候的にダケカンバの分布の端であると推測された。塩基配列を解析する手法を用いて遺伝特性をそれぞれ比較したところ、分布の南端の紀伊半島は遺伝的多様性が特に低く、ほかの集団とも異なっていた。

さらに集団間の苗木の成長形質を比べたところ、中央アルプスの苗木は低い生存率と固体サイズを示した。紀伊半島の苗木はそれらに加えて成長率も小さいことが分かっている。

研究で2つの異なる苗木の成長形質の低下が起きていることが分かった。分布の端とされた中央アルプスの森林限界の低温環境かつ短い成長期間に適応して、ほかの環境では不利な小さい固体サイズが選択されたと考えられた。

紀伊半島の集団はほかと距離が大きく離れており、近親交配の影響により有害遺伝子が蓄積して低い生存率と成長率を示したと考察した。

研究グループは「産地試験林に植栽した苗木だけでなく、実際の森林やほかの南限地の集団が同じような影響を受けているのかをさらに調べる必要がある」と指摘している。

紀伊半島釈ヶ岳のダケガンバ林。個体数が少なく他のダケ
ガンバ林集団と距離的に遠く離れていることが確認された