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キラル医薬品探索研究の推進に期待 名大教授らが塩触媒を開発 

名古屋大学の石原一彰教授らの研究グループは8日、リチウムアセチリドのケトンへのエナンチオ選択的付加反応に有効なキラル大環状ジリチウム(I)塩触媒の開発に成功したと発表した。キラル医薬品探索研究の推進が期待されている。

不斉合成法は精密な分子合成技術を要するキラル医薬品合成に欠かせない技術だ。だが、触媒による制御が、基質と反応剤の反応性のアンバランスに打ち勝てない場合がある。特に不斉触媒反応の開発では課題が多く残っているという。

研究グループはキラル大環状ジリチウム(Ⅰ)塩触媒を創製することにより、高収率・高エナンチオ選択的なケトンの不斉アルキニル化反応を開発した。重要な点は、大環状触媒キラルポケットで立体を認識しながらケトンとリチウムアセチリドを同時に包接して活性化することだ。

さまざまなケトンとリチウムアセチリドに対して反応を最短5分で完結させることに成功した。また、NMR解析、X線結晶構造解析、質量分析などから触媒の構造推定と機能解明を実施。新たなマルチ選択的反応を実演することで、酵素に匹敵する触媒機能を証明している。

研究チームは「マルチ選択性制御法の開発研究にブレイクスルーを与える者であり、付加価値の高いキラル有機化合物を純度抑迅速に提供できることから、医薬品探索研究の推進が期待される」としている。