文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
「湯川理論」の新たな拡張 理研研究GがTccの性質を理論的に解明

理化学研究所(理研)の土井琢身専任研究員らのグループは、物質を構成する素粒子「クォーク」4個から成る純粋テトラクォーク状態(Tcc)の性質を理論的に解明した。科学雑誌「フィジカルレビューレター」で掲載している。

研究グループは、Tcc状態がD中間子の状態に分割できることに着目。この2つの中間子の間に働く力を格子量子色力学(格子QCD)で計算した。

格子QCD計算は2つのステップから成る。クォークがない状態でQCDがどのような性質を持つかを計算する部分と、その状態に(Tccに対応する4個の)クォークを付け加えた場合にどのような現象が起きるかを計算する部分だ。

最初のステップについては、スーパーコンピュータ「京」を用いてすでに研究グループが大規模計算を完了している。2番目のステップについても大規模な数値計算が必要で、これはスーパーコンピュータ「富岳」の能力を用いることで計算ができるようになった。

「京」から「富岳」へとつながるスーパーコンピュータの発展を最大限に活用することで、これまで不可能だった、「ほぼ現実世界」に対応する状況でのTccのシミュレーションを、世界で初めて行った。

この結果、D中間子とD*中間子の間には、互いに引き合う力が働くことが分かっている。特に、距離が遠いときには、2つのパイ中間子がD中間子とD*中間子の間を飛び交って引力が働くことも突き止めた。

陽子と中性子の間では距離が遠いときには1つのパイ中間子が飛び交って引力が働き束縛状態が構成されることが湯川博士の理論で知られており、今回の結果は湯川理論の新たな拡張ともいえる。

研究グループは今後について「チャームクォークを含む状態に加えて、より重いボトムクォークを含む状態についての研究も進めることにより、クォーク4個、5個、6個といったさまざまな状態における新粒子の探索を進めていく予定」と述べた。