筑波大学の秋山英三教授らの研究チームは、協力行動の進化のメカニズムについて、個体間の競争（相互作用）と学習（戦略更新）の範囲の非対称性を多重ネットワークで表現。多様なシナリオをシミュレーションで検証した。その結果、従来の研究とは逆の、非対称性が協力行動を促進しうる新しいケースを明らかにしている。

協力行動は、私たちの社会の基盤を形成する要素の一つ。近年、人間の社会的なつながりを捉えるモデルとして「多重ネットワーク」が注目されている。先行研究では、協力進化の主要なプロセス、「競争（相互作用）」と「学習（戦略更新）」が同じパートナーと行われるほど協力の進化が促進されることが示された。

研究では、多重ネットワークを用いて、協力行動が集団に広まっていく仕組みを分析。相互作用と戦略更新の相手選びの範囲に関する対称性に焦点をあて、多様なシナリオを検証した。その結果、これまでの研究とは逆の非対称性が協力の進化を促進する新しいケースが存在することが判明した。

研究チームは「この発見は、あるグループ内で協力行動を広めようとする場合、競争と学習を異なるパートナーと行う非対称的なアプローチが効果的なケースもあり得ることを示唆している」と説明。「今後、本研究結果を、人類学・経済学・社会心理学など社会科学分野の研究と結びつけ、協力の進化に関する研究が更に深められ展開していく」としている。