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熱電変換材料としての実用化に一歩 北大などの研究Gが実用的な発電材料の単結晶化に成功 

北海道大学の太田裕道教授らの研究グループは、釜山大学校との共同研究により高温、空気中で安定な高性能熱電材料Ba₁/₃CoO₂の単結晶化に成功した。熱電変換材料としての実用化に向けて大きく前進したとされている。

研究では、サファイア基板上にBa₁/₃CoO₂単結晶膜を作製する際に、膜/基板界面に自然に生成する水溶性のBa-Al-O層に着目。Ba₁/₃CoO₂膜は単結晶であることから、水溶性Ba-Al-O層を水で溶解するだけで、だるま落としの要領でBa₁/₃CoO₂結晶膜を簡単に剥離することができると考えた。

サファイア基板上に作製したBa₁/₃CoO₂単結晶膜を、水温40度の温水に浸したところ、Ba₁/₃CoO₂単結晶膜がサファイア基板から剥離し、自立膜となって水面に浮かんだ。自立Ba₁/₃CoO₂単結晶膜をガラス基板上にすくい取り、十分に乾燥させて自立Ba₁/₃CoO₂単結晶膜を電子顕微鏡で観察したところ、厚さが約600ナノメートルで目立つ欠陥がないことが分かった。また、層状構造由来の原子配列を明瞭に観察できている。

次に、室温、空気中で熱電特性を計測。熱電特性はすべてBa₁/₃CoO₂単結晶膜の面内方向で測定した。剥離後にはBa₁/₃CoO₂単結晶がわずかに変形するため、剥離前後の特性を比較すると、わずかに剥離後の導電率が減少。熱電能及び熱伝導率は誤差範囲内で一致し、Ba₁/₃CoO₂単結晶膜は剥離後においても剥離前と変わらず高い熱電性能を維持することが明らかになっている。

研究グループは「期待されていたBa₁/₃CoO₂の単結晶が実現したことから、熱電変換材料としての実用化に向けて大きく前進したと考えている」と評価した。