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阪大研究Gが膵がん発展メカニズムを新解明 創薬に期待

大阪大学の竹原徹郎教授らの研究グループは、炎症制御分子「REGNASE-1」の発現低下が免疫細胞の働きを低下させる「骨髄由来抑制細胞(MDSC)」を誘導し、抗腫瘍免疫の回避を介して膵がんを促進させることを明らかにした。新たな薬の開発につながる可能性もある。

膵がん手術検体を用いた検討の結果、腫瘍部におけるREGNASE-1の発現量が低い患者では、高い患者と比べて生存率が低下していた。また、REGNASE-1発現低下は、腫瘍マーカーであるCEA高値と同じく、患者の予後悪化に寄与することが分かっている。

そこで、膵特異的にがん遺伝子「Kras遺伝子」の変異を認めるマウスに対してREGNASE-1をさらに欠損させたマウスを作成した結果、このマウスは早期に膵がんを発症して死亡した。また、このマウスでは膵がん組織に著明なCD11b蛋白陽性のMDSCが浸潤していることを見出している。

膵がん細胞株を用いた検討の結果、膵がん組織中で発現亢進を認めるIL-1βが、REGNASE-1発現を減少させることで、MDSCの誘導や形成に関与するCXCL1、CXCL2、CSF2、TGFβなどのサイトカイン発現を増加させることを発見した。

次に、マウス膵がん細胞株を野生型マウスの膵臓に移植する同種同所移植膵がんモデルを用いて、MDSCの除去や共移植が腫瘍形成に与える影響を検討。その結果、REGNASE-1欠損した膵がん組織では、浸潤したMDSCが細胞障害性T細胞による抗腫瘍免疫を抑制することで、腫瘍進展を促進させていることが判明した。

これらの結果から炎症により産生されるIL-1βが、REGNASE-1の発現量を低下させることでMDSCを誘導。細胞障害性T細胞による抗腫瘍免疫を抑制することで膵がんの進展が促進されるという炎症による膵がん促進の分子機序を突き止めた。

研究チームは「REGNASE-1を標的とした膵がんの新たな創薬が進むことで、悪性度の高い膵がん患者の予後改善に繋がることが期待される」としている。