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すい臓がんを描出してアルファ線で攻撃 がんに対する全身治療に期待(阪大)

大阪大学の渡部直史助教らを中心とする研究チームは16日、岩手医科大学との共同研究で膵臓がんに発現するグリピカン-1(glypican-1)を標的とした新たな放射性抗体([Zr-89/At-211]標識抗glypican-1抗体)の開発に成功したと発表している。がんに対する全身治療につながる可能性もある。

同大学によると、研究において開発したZr-89標識抗glypican-1抗体を膵臓がんのモデルマウスに静脈内投与したところ、腫瘍に高集積を示すことが画像で確認。腫瘍への集積は1日後にピークを認めており、抗体製剤としては早い腫瘍分布を示した。

さらに標識する核種をアスタチン(アルファ線を放出)に切り替えたAt-211標識抗glypican-1抗体(100kBq)を投与すると、未標識抗体を投与したコントロール群と比較して、膵臓がんの増殖を抑える効果が認められた。加えてアルファ線治療においては、十分な治療効果を得るために抗体が内在化することが重要であることも分かっている。

膵臓がんは従来の画像診断では同定が難しいことがあり、Zr-89標識抗glypican-1抗体を用いることで早期発見や高精度の転移診断につながることが期待される。またAt-211標識抗glypican-1抗体については、手術で摘出することが困難な場合、あるいは従来の抗がん剤に抵抗性の進行がんに対しても、全身のがん病変をアルファ線で攻撃することで治療効果が期待できる。

研究における抗glypican-1抗体は岩手医科大学の仲哲治教授より提供され、同大の世良田聡准教授の支援を受け、PETプローブの評価を進めた。PET画像診断薬の標識に用いたジルコニウム(Zr-89)は大阪大学医学部附属病院内に設置された医療用サイクロトロンを用いて製造され、仲定宏薬剤師(同病院薬剤部)が標識を行った。従来のPET画像診断に用いられるフッ素(F-18)の半減期は110分と短い。体内に比較的ゆっくり分布する抗体には長半減期PET核種のZr-89(半減期 78.4時間)が適している。

研究チームは「将来的に日本発の治療として、世界中で治療を必要としている難治性がんの患者さんに用いられることが期待される」と述べた。