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植物が匂いを感じる瞬間 埼玉大研究チームが可視化に初成功

埼玉大学の上村卓矢博士研究員らのチームは10日、食害を受けた植物が放出する匂いを近隣の植物が感じた瞬間に発生させるカルシウムシグナルの可視化に成功したと発表。この信号が危険情報を伝え、昆虫に対する防御反応を引き起こしていると明らかにした。

研究グループは蛍光バイオセンサー(GCaMP)が細胞内のカルシウム濃度上昇(Ca²⁺シグナル)によって明るく光ることを利用して、GCaMPを発現させたシロイヌナズナを用いて、匂いを感じた植物で発生するCa²⁺シグナルの可視化を試みた。

そして、幼虫の食害によって植物から放出される匂いをシロイヌナズナに吹きかけると、葉が明るく光り始めることを明らかにした。

どのような匂い物質がシグナルを引き起こすのか。植物が放出する緑の香りやテルペン類、ジャスモン酸類などを解析した結果、緑の香りである青葉アルデヒドである(z)-3-ヘキセナールと(E)-2-ヘキセナールが信号を出させていることが分かった。

そうした物質は嗅覚をもたない植物にどのような経路で取り込まれ、感知されるのかを知るためにCa²⁺シグナルを細胞レベルで観察。バイオセンサーを空気の取り込み口である気孔や葉の表面を覆う表皮細胞、葉肉細胞だけに作らせて、それぞれの合図を可視化した。すると、緑の香りを気孔から内部へ吸収する可能性が示された。

それを確認するために、薬理学的な解析を実施した。気孔を閉鎖させる作用があるアブシジン酸を投与したところシグナルの発生が著しく遅くなることが判明。サインを出現させるためには気孔が重要であると推測された。

研究チームは「ヘキセナールのような緑の香りは、近くの植物の気孔から内部に取り込まれ、葉肉細胞などでCa²⁺シグナルを発生させることで昆虫に対する抵抗性を上昇させると考えられる」としている。