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京都府立大研究Gが植物の根毛側面に細胞壁成分を輸送する経路を発見

京都府立大学の平野朋子准教授らを中心とした共同研究グループは、モデル植物シロイヌナズナを用いて、根毛の側面部分に二次細胞壁成分を輸送し、根毛側面を硬くすることで、真っ直ぐ伸びながら形を維持する仕組みを解明した。この成果から栄養源が乏しい土壊中から効率よく栄養を吸収できる植物体を開発できる可能性があるとしている。

根毛は先端部分が伸びると同時に側面の拡大を抑制するため、細長い管状構造を形成している。土の抵抗に逆らうため、側面を硬くする。この面には、二次細胞壁が形成されているが、細胞壁を輸送する分子機構については不明であった。

だが、研究グループは植物を含む真核生物の細胞内において、膜で囲まれた細胞小器官(オルガネラ)間の物質輸送システムである「小胞輸送」の研究より、SYP132、SYP123というSYPタンパク質とVAMP721、VAMP727というVAMPタンパク質が根毛の伸長に関与することを明らかにしていた。

根毛の細胞膜に特異的に発言するSYP123と緑色蛍光タンパク質(GFP)などを発現するシロイヌナズナの根毛を観察したところ、根毛の側面形成に必要な脂質「ホスファチジルイノシトール3,5―二リン酸」とその合成酵素「FABI」が制御する輸送経路とSYP123が働く輸送経路は同一であり二次細胞成分を輸送していると判明した。

また、タンパク質間の相互作用を検出する「二分子蛍光相補法」とタンパク質の抗体を用いる「共免疫沈降法」によりSYP123と輸送小胞に存在する「VAMP721」と「VAMP727」が関与する経路の2種類があることが明らかになった。

根毛細胞では、「先端成長のための物質輸送ルート」にSYP132とVAMP721の複合体とSYP123とVAMP721の複合体が、「側面の硬化と成長抑制のための物質輸送ルート」に、SYP123とVAMP727の複合体が働くことで、根毛を伸長すると同時に側面を硬くし、根毛の細長い形を作っていることが分かっている。