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「顔面奇形」が作られる過程 東大研究Gがゼブラフィッシュで確認

東京大学の研究グループは花王㈱との共同研究で25日、奇形を引き起こすことが知られているさまざまな化学物質を顔面をつくる細胞が光る受精卵「ゼブラフィッシュ胚」に与えることで、顔面を作る細胞の胚発生初期における「移動」が異常になるために顔面奇形が引き起こされることを発表した。

研究グループはゼブラフィッシュを使って顔面をつくる細胞を緑色蛍光タンパク質(GFP)で光らせることによって奇形が引き起こされる全過程を胚発生から可視化し、その中で最も重要なステップを特定しようとした。

まず、頭蓋顔面は神経堤細胞と呼ばれる細胞が骨格を作ることによって形作られる。そこで、この神経堤細胞で働くSOX10という遺伝子を利用して、神経堤細胞でGFPが作られるゼブラフィッシュ系統を作った。次にマウスや人で頭蓋顔面奇形を引き起こすことがすでに分かっている五つの催奇形性物質を受精4時間後から胚に投与。

その結果、すべての物質について稚魚の上あごが分岐し、また下あごの骨が矮小化することを見出し、ゼブラフィッシュでもマウスや人とほぼ同じ奇形が誘発されることを確かめた。

次に奇形が引き起こされる過程を受精直後から追跡した。神経堤細胞は受精後12時間目までに頭の神経管の背側で生まれ、その後まもなく顔面に向かって大移動を始める。興味深いことに、用いたすべての催奇形性物質は、胚発生初期に神経堤細胞の顔面への移動を大きく阻害することが分かった。

しかも移動阻害の程度は最終的な奇形と一致していなかった。細胞の移動の様子を動画で観察すると、細胞の「足」をうまくだせなかったり逆向きに異動するなど細胞の運動能力の低下が認められた。

さらに運動能だけでなく増殖能も低下していること、また細胞死も起こしやすくなっていることも分かった。

研究グループは「顔面の奇形は骨をつくる神経堤細胞が胚発生のごく初期に体の正しい場所に移動できなくなることによって生じることが示された。さらにこの以上は、神経堤の移動先で作られる咽頭弓の大きさや形から以上を起こし、最終的に口蓋やあごの骨の形態以上を引き起こすことが分かった」とコメントしている。