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【研究最前線】ドーパミン細胞が匂いの価値を更新 理研TLが機構解明

理化学研究所の風間北斗チームリーダーらの共同研究チームは25日、ドーパミン細胞が動物にとって匂いの価値を符号化し、匂いを嗅ぐ度に更新することが分かったと発表した。脳領域における生理学の理解が進むと期待されている。

共同研究チームは匂いに対して明確な行動を示すなどさまざまなメリットがあることからショウジョウバエを使って研究を行った。カルシウムイメージング法と画像解析技術を用いてドーパミン細胞の活動を記録することに成功している。

多様な匂いをハエに提示したところ、好きな匂いに強く反応するドーパミン細胞タイプと嫌いな匂いに応答するタイプが認められた。数理モデルを利用した解析の結果、ドーパミン細胞の匂い応答から匂いの好みの生まれながらの価値が推定できることが判明する。

また、ドーパミン細胞は苦味や甘味といった味の価値も符号化していることが知られたが、同時に味と匂いを足し合わせていることを発見した。これはドーパミン細胞が異なる感覚刺激の価値を忠実に統合できることを示唆している。

次にドーパミン細胞の匂い応答を生み出す神経回路メカニズムを神経回路の地図である「コネクトーム」のデータベースを使って調べた。ネットワークの解析から、学習依存的とうまれつきの行動に関わる両方の嗅覚経路が、ドーパミン細胞の匂い応答の生成に貢献できることが示された。

その後、ドーパミン細胞の匂いへの応答が匂いの価値を表現していると考えられる「キノコ体出力細胞」の活動にどのような影響を与えているのか調査。匂いが感覚とドーパミン回路を同時に活性化させるという結果から、ドーパミン細胞は報酬や罰を符号化して感覚刺激の価値を更新するという定説とは別の役割があると考え、匂いの提示だけで連合野の出力細胞の活動が変化するという仮説を立てられた。

そこで、キノコ体出力細胞の活動を記録してみた結果、仮説通り、匂いの繰り返し提示によって匂いの価値とドーパミン細胞の匂い応答に依存して活動が変化することが確認された。こうした結果から、感覚刺激の価値の動的な亢進におけるドーパミンの新たな役割が明らかになっている。

研究チームは「ドーパミン細胞の匂い応答を網羅的に記録し、神経活動記録とコネクトームのデータを組み合わせて、シミュレーションを行った先駆的な成果だ。この技術を応用することで今後さまざまな脳領域において解剖学的データに基づく生理学の理解が飛躍的に進展すると期待される」としている。