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【研究最前線】ポリエチレン分子鎖の向きを可視化 東北大教授らが世界で初成功

東北大学の陣内浩司教授らの研究グループは22日、最新の電子顕微鏡法による構造解析手法をポリエチレンナノ結晶の構造解析に用い、電子染色を行わずに本来の“姿”(形態)の10ナノメートル程度の「ナノ結晶」を可視化し、その内部の分子鎖配向を直接解析することに世界で初めて成功した。これはカーボンニュートラル社会の構築に不可欠な先端構築手法だという。

ポリエチレンは多数の炭素原子と水素原子がつながった長いひも状の高分子であり、この分子鎖が規則的に配列することで構造の基本単位である厚さ20ナノメートル程度の板状結晶(ラメラ晶)となる。ラメラ晶内部の分子鎖の配列や配向といった分子レベルの構造については、観察する手法がなく有用な知見はほとんどなかった。

そこで、研究グループは、非常に高倍率で観察できる「透過電子顕微鏡法(TEM)」を用いた最先端の観察技術により、ポリエチレンのラメラ晶の形態および内部の分子鎖配向を可視化する手法を開発した。

これまでのTEMを用いた研究では、電子染色された試料中のラメラ晶の概形観察や電子図形として観測する「制限視野電子回折法」による結晶の平均情報の解析のみが行われてきた。

研究では、最新の高性能検出器の利用に加え、電子線をナノメートルサイズに収束しながらも結晶へのダメージを最小限とする照射条件を探索した。その結果、平均厚みが18ナノメートルのラメラ晶を含むポリエチレン試料に対し、収束電子線を6ナノメートル間隔で走査することで、各照射点から電子回折図形を取得(ナノ回折イメージング)できることを見出した。

この手法により取得した36万枚の電子回折図形に対し回折スポットの強度と角度を抽出することで、ラメラ晶の形態や内部の分子鎖の配向を鮮明に可視化することができた。

これにより、ポリエチレン試料の内部に形態や分子鎖配向が異なる様々なラメラ晶が存在すること、平行に並んだラメラ晶と単独のラメラ晶では分子鎖の配向様式が明確に異なることなどが明らかになった。これらの情報は、材料の物性に繋がる重要な情報であり、他の従来法では決して達成できない高分解能の画像を得ることで初めて得られたもの。

研究グループは「本研究で開発されたプラスチック材料計測に最適化されたナノ回折イメージングは、今後のカーボンニュートラル社会の構築に不可欠な先端計測手法と考えている」としている。