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【研究最前線】東京理科大 水モデルOPCとOPC3の粘性の計算性能を評価

東京理科大学の安藤格士准教授は21日、水系の分子シミュレーションモデルとして有望視されているOPCとOPC3を用いてさまざまな温度におけるせん断粘度の評価を行い、広く用いられている他の水モデルよりも優れているという結果を報告した。安藤准教授は「水系の分子シミュレーションを行う際の基礎的データとなる」と話している。

研究では、OPCとOPC3モデル、TIP4P/2005、TIP4P-FB、TIP3P-FBモデルにおいて、273,283,293,298,303,313,333,353,373Kの9つの温度でせん断粘度を計算しました。液体の水をシミュレートするために、一辺の長さが約40Åと20Åの立方体の箱に、それぞれ2000個と256個の水分子を入れた2つの系を採用した。

その結果、OPCとOPC3では、温度が310K以上では実験値とよく一致しましたが、それ以下の温度ではでは実験値からの乖離が見られ、298Kでは実験値より10%、273Kでは実験値より20%低いという結果になった。OPCおよびOPC3モデルのせん断粘度の予測性能は、TIP4P/2005、TIP4P-FB、およびTIP3P-FBの予測性能よりも低かったものの、293K以下の温度では、SPC/EおよびTIP3Pモデルの予測性能よりも優れていた。

そこで、OPCとOPC3の水モデルのせん断粘度が低温で過小評価される理由について、水の酸素原子間の動径分布関数g(r)に着目し、本研究で検討した各モデルについて検討した。その結果、273K におけるg(r)の最初のピークの高さは、TIP4P-FB > TIP4P/2005> TIP3P-FB >OPC3 > OPCの順に減少。

この順序は、273 Kで測定されたせん断粘度の減少順序(TIP4P-FB>TIP3P-FB>TIP4P/2005>OPC3≈OPC)とほぼ一致しており、せん断粘度がg(r)の最初のピークの高さと相関していることを示していることが判明した。

TIP3P-FBの最初のピークは、TIP4P/2005のそれよりも短い距離に現れ、OPC水モデルでは、最初のピークはOPC3よりも長い距離に位置した。この結果は、せん断粘度がg(r)の最初のピークの位置とともに減少することを示唆している。

安藤准教授は、「今回の研究対象であるOPC、OPC3水モデルは、その性能の⾼さゆえに注⽬されているが、粘性に関しては報告がなかった。そこで、計算の結果を報告し、研究者コミュニティで共有できるようにしたいと思う。本研究結果は、水系の分子シミュレーションを行う際の基礎的なデータとなる」と、研究の意義を語った。