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マダニによる病「日本紅はん熱」 フルオロキノロン併用療法は危険と世界初発見 福島県立医大・長崎大

福島県立医科大学の山藤栄一郎教授らは、長崎大学の樋泉道子准教授と共同で日本紅はん熱治療で行われるフルオロキノロン併用療法の危険性を世界で初めて示した。フルオロキノロン併用療法に伴う有害事象が発生する可能性が明らかになっている。

日本紅はん熱はダニ媒介の感染症。これまで薬の併用療法がよく実施されてきたが、それが死亡率を小さくする証拠は見つかっていなかった。さらに、併用療法の有害事象に関する研究はなかった。

研究グループは日本紅はん熱の確定診断を受けた患者を、テトラサイクリン系抗菌薬(TC)のみを使ったグループ(単剤治療群)とTCとフルオロキノロン系抗菌薬(FQ)を併用したグループ(併用療法群)に分け、死亡率や痙攣(けいれん)などの合併症を評価した。

それによると、併用療法を受けた患者と単剤治療群の死亡率に差は認められなかった。死亡率改善の点で併用療法が優れているわけではないことが示された。

さらに、FQの異種であるシプロフロキサシン(CPFX)を使った併用療法では死亡率が高くなる可能性がでたという。加えて、併用療法の約3割の患者がFQと共に解熱鎮痛剤である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使われており、これが痙攣のリスクを大きくすることが分かっている。

併用療法の有害事象について、CPFXを使用した併用療法は死亡率に悪影響を与える可能性やFQとNSAIDsの併用が痙攣のリスクを高める可能性があると分かった。また、他の既報併用療法が死亡率を改善しないことも示されている。

研究グループは「有害事象の可能性が示されたこと、かつ死亡率を改善しないことから、日本紅はん熱の治療においてTCとFQの併用療法は推奨されるべきではないと結論付けられた」とし「これは今後の日本紅はん熱の推奨治療に大きく影響し、かつ抗菌薬の適正使用の観点からも非常に重要な発見だ」としている。