東京工業大学
東京工業大学の二階堂雅人准教授らと総合研究大学院大学の中村遥奈研究員ら、タンザニア水産研究所の共同研究チームは、東アフリカのビクトリア湖へ持ち込まれた外来魚類「ナイルパーチ」が在来種のシクリッドにもたらした影響をゲノム解析から明らかにした。絶滅危機に瀕した要因を解明したことは、湖の種多様性の保全に貢献するという。
ナイルパーチは大型で肉食の食用魚。全世界に流通しており、多くの固有種が生息する東アフリカのビクトリア湖に与える影響は多くの科学者が警鐘を鳴らし続けてきている。1990年代に絶滅した在来種「シクリッド」への影響の評価はこれまで行われてこなかった。
解析によるとシクリッド4種「Haplochromis sp. ‘matumbi hunter’」と「H. microdon」、「H. chilotes」、「H. sauvagei」で数が減少することで多様性も減るボトルネック効果がみられた。
個体数の減少は1970~80年代?に始まっており、ナイルパーチの勢力が拡大した時期と一致した。これはナイルパーチの侵略がきっかけで起きたと推測されるという。
H. sp. ‘matumbi hunter’と H. microdon は、他のシクリッドから卵を奪って食べる「卵・稚魚食」のシクリッドとされる。大量絶滅が起こった際、ナイルパーチと同じ地位に位置する肉食性シクリッドから先に絶滅したことが予想されていた。この研究では、理論的に予想されていた侵略と肉食性シクリッドの絶滅関係性を検出している。
研究グループは今後について「複数種間でボトルネックの規模を比較することで、生息地域や環境、生態などの違いが、ナイルパーチから受けた被害の差にどの程度影響を与えたのか明らかにしたい」としている。