東北大学の深澤遊准教授らは、腐朽したアカマツの倒木上に12樹種の種子を蒔き、菌類による腐朽(ふきゅう)の違いによって種子の発芽と成長、生存が影響を受けることを明らかにした。
これまで菌類が倒木の朽ちさせる分解成分の違いが、次世代の樹木の芽生えに影響する可能性が指摘されていたが、実験的に検証した例はなかった。
グループは倒木成分リグニンを分解する「白色腐朽型」と分解しない「褐色腐朽型」の倒木12種に種子を蒔いて、2年間観察した。
その結果、スギやウワミズザクラは褐色腐朽の倒木上で成長しやすいと分かった。さらに、倒木内部に生息する菌類を調査。これらの樹木と共生する「アーバスキュラー菌根菌」の多様性は褐色腐朽の倒木が、白色よりも高かった。
また、アーバスキュラー菌根菌と生きるイヌツゲの菌根菌感染率は白色よりも褐色の倒木で高いことが判明した。一方、森林の重要な共生菌である外生菌根菌と共存するダケカンバは、菌根菌の感染率は褐色よりも白色の倒木で大きくなっていた。
研究グループは「多様な菌類による倒木分解は、倒木に更新できる樹種の多様性を高める可能性があることを示唆している」とコメントしている。