量子科学技術研究開発機構（QST）の西内満美子上席研究員らの国際共同研究グループは、高強度レーザー施設「Dracoレーザー」を用いて、四半世紀にわたり超えられなかった光速の4割に達するイオンビームの発生に成功した。英科学誌「ネイチャー・フィジックス」のオンライン版に13日付で掲載されている。

粒子線がん治療というイオンビームを照射してがん細胞を死滅させる治療法がある。これには大きな加速器と建物が必要で、普及を妨げる一因とされている。小型化を可能にする技術にレーザーイオン加速があり、この発展が期待されている。だが、これまで光速の40％を超えるビームは発生しておらず、障害となっていた。

研究グループはイオンを多段階で加速する手法を提唱。小型レーザーであるDracoレーザーを用いて実験した。その結果、世界最高速度である光速の50％のビームを20ミクロンメートルの領域で発生させることに成功している。

西内上席研究員らは「より高強度のレーザーを用いることで、既存の加速器を用いることなく、レーザー技術のみでがん治療にそのまま利用可能なイオンビーム発生が実現できると期待される」とし「超小型のレーザー駆動・粒子線がん治療装置の完成に向けた大きなマイルストーンと位置付けられる」と評価している。