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シグナル伝達をとらえる空間オミクス技術の開発に成功 がん治療戦略に貢献 九大

九州大学の大川恭行教授らのグループは、免疫染色したシグナルを消光可能な抗体「PECAb」を開発した。細胞の位置情報を保持したまま最大200種類以上のたんぱく質の発現情報を取得する空間オミクス技術を確立している。英科学雑誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に8日付で掲載された。

近年、空間情報を維持したままたんぱく質や遺伝子発現を計測する「空間オミクス」と呼ばれる技術が誕生し、細胞状態と分布をとらえることが可能となった。だが、細胞が変化する原因を解明するには、さらにシグナル伝達の活性化を計測することが必要とされる。

研究グループが生みだしたPECAbは数100万分の1メートル単位で細胞を検出した上で、調査による発光を還元剤で速やかに消すこともできる。加えて、シグナル伝達分子も含めて206種類のたんぱく質を染色できる。

これを用いて解析したところ、細胞の老化状態を判別し、それに伴うシグナル伝達の運動を可視化することに成功した。細胞の状態変化による信号の活性化情報が得られる唯一の空間オミクス手法だという。

大川教授らは「本技術を疾患組織の解析に応用することで、がんの悪性化や各種疾患につながる特異的な細胞環境やシグナル伝達メカニズムを解明し、新たな疾患の治療戦略確立につながる」と講評している。