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ABCF因子、難翻訳のたんぱく質合成を促進 病理解明や生産効率化に貢献 岡山大など

岡山大学の茶谷悠平准教授や東京工業大学の田口英樹教授らのグループは大腸菌をモデル生物とした解析から、難しい翻訳配列への対抗手段として因子「ABCFたんぱく質」が働いていることを新らたに明らかにした。茶谷准教授は「合成不可能なアミノ酸配列でも、可能にする改変型ABCFたんぱく質の創出につなげていきたい」としている。

生物の細胞を形作るたんぱく質は、人には2万種あるとされる。配列の多様性は生命現象を実現させるために欠かせないが、たんぱく質の合成(翻訳)を担うリボソームはどのようなアミノ酸の組み合わせでも翻訳できることが求められる。だが、それにも得手不得手があり難翻訳がどのように実現されているのかは分かっていなかった。

研究チームはリボソーム内部に抗生物質を排出して、たんぱく質合成系を正常に保つABCFたんぱく質に着目。このたんぱく質と同様にリボソームに作用する翻訳因子「EF-P」も、合成困難なアミノ酸の翻訳を進めていたことから、同じ機能を持っているという仮説を立てた。

研究の結果、ABCFたんぱく質は、「翻訳停止配列SecM」、「負電荷アミノ酸クラスター」、「負電荷 / 正電荷アミノ酸クラスター」、「プロリン連続配列」といった難しい配列の合成を促進することが明らかになっている。

グループは「ABCFの一部はヒト疾患との関連も指摘されており、本研究成果はその病理解明、あるいは微生物を用いたタンパク質生産効率化につながる」と期待を寄せている。