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ヤマトヤスデの卵巣の構造的多様性を初発見、定説をくつがえす 「ろぼう上皮の構造を再検討する必要」 筑波大

ヤマトタマヤスデ

筑波大学の八畑謙介講師らは、ヤスデ類の「ヤマトタマヤスデ」の卵巣を観察し、他足類に存在が否定的であった構造的多様性を発見した。同類の卵のもとである卵母細胞周辺の体細胞層「ろぼう上皮」に多様性を初めて認め、これは昆虫類だけのものでないことも示唆している。

昆虫類のろぼう上皮は構造的多様性を持つ一方で、これは同類以外の節足動物からは報告がなかった。だが、近年、ヤスデ類の一部においてこの上皮が厚くなっていると発見され、構造的に多様になっている可能性が示唆されている。グループはヤマトタマヤスデのろぼう上皮と分化課程を検討した。

ヤマトタマヤスデの肥厚部位を観察すると、代謝活性機能に関わる構造が認められている。また、肥えた部位のある部分では表面積を増やす徴絨毛(ちょうじゅうもう)があった。

グループは肥厚しているところとその他が構造的単位であるならば、分化課程にも違いがあると考察。すると、肥厚部分は卵母細胞に卵黄が蓄積する以前から成長し、上皮細胞を覆う基底膜を退縮させていると確認している。

ヤマトタマヤスデのろぼう上皮は厚い部分とその他の二領域に分かれていることが明らかになったという。八畑講師らは「今後、昆虫類以外のさまざまな節足動物でろぼう上皮の構造と機能を再検討していく必要がある」と指摘。「節足動物内部の類縁関係について、卵巣形態から根拠を与えられると期待できる」とコメントしている。