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ミジンコの共存戦略 休眠卵を多く生産してライバル集団と同数に 東北大

畑谷大沼のミジンコ2集団

東北大学の丸岡奈津美博士(現宇都宮大学・博士研究員)らのグループは、山形県の畑谷(はたや)大沼に生息するミジンコ種の 2 集団「JPN1」「JPN2」は、一方が他方を排除する競争関係にあるにもかかわらず長期的に共存していると発見した。弱い集団が競争相手の増加を察知し、排除される前に休眠卵を生産することで実現している関係だと発見している。

研究グループはメスのみで卵を残せるミジンコの2集団を畑谷大沼で確認した。9年間の調査を続けると、ほとんどの年で春に出現し、秋になる前には姿を消しており、生息する水深は同じだと分かっている。

だが、室内で行った競争実験によると、エサを巡る競争でJPN2は劣位であり共存すれば数が少なくなる。そのため、何らかの戦略を用いていると考えられた。厳しい環境を乗り越えるための休眠卵を湖底から採集すると、両集団に数の差はなかった。これは個体あたりの休眠卵の生産数は、JPN2が勝っていることを示している。

また、両集団を濃密に飼育した水槽では、JPN2がJPN1よりも多くの休眠卵を産み、同じ集団のみの場合よりも多かった。一方、JPN1は同じ空間で飼っても卵の増加がみられなかった。

これらの結果から、両者が共存できているのはJPN2が競争相手の増殖を察知し、排除される前に休眠卵を作ることで翌年以後に個体群を形成できるためであると考えられている。

研究グループは「不確かな環境変動の元では休眠卵を生産することが、長期的に生き残れる戦略である」と考察。今後について「同種でありながら休眠卵生産のタイミングが異なるメカニズムを研究したい」とコメントしている。