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HIVの治癒に向けて前進 ウイルス動態を高精度で可視化する方法を確立 東京医科歯科大など

熊本大学と東京医科歯科大学、鹿児島大学などの研究グループは、時間動態が観察可能なタイマー蛍光たんぱく質を使った「HIV-Tockyシステム」を開発した。HIVが細胞に侵入した後の状態を観察可能にしている。HIVの治癒に向けて前進した研究成果だという。

HIVは免疫不全を引き起こすウイルスで、未治療の場合、後天性免疫不全症(エイズ

)に進行する可能性がある。これは細胞死を引き起こし、病態をエイズに進める一方で、全てが細胞死に至るわけでなく、ウイルスが休眠する「潜伏感染」となる場合もある。ここに薬剤の効果が及びにくく、HIVの感染治癒を困難にしているという。

グループは蛍光たんぱくを活用したHIV-Tockyシステムを作成し、細胞に侵入した後の可視化に成功した。

これを使ってHIV潜伏感染細胞が生まれてくる様子を解析したところ、感染後すぐに潜伏化した群と1度ウイルスの増殖が活性化した後に潜伏化した群を区別することを可能とした。潜伏メカニズムが異なる仕組みで起きていることを発見している。

また、HIV-Tockyシステムを用いて作製した潜伏感染モデル細胞を10種以上樹立。それぞれのウイルスの全長配列及び組み込み部位情報を解析して決定した。このモデルは従来と比べて、より鋭敏に薬剤効果を判定できると考えられている。

研究グループは「研究成果はHIV感染の治癒へ向けた、新たな研究ツールを提案するものであり、現在は治癒が困難であるHIV感染症の問題克服へ向け、一歩前進する研究成果だ」と講評している。