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「遺伝情報の変化」が脂肪のエネルギー消費促進 肥満を抑制 肥満や糖尿病の機序解明に期待(東北大)

東北大学の酒井寿郎教授らの研究グループは、マウスを使って遺伝情報「エピゲノム」の書き換えを行う酵素の活性を欠失させた。すると、体に中性脂肪をためる「白色脂肪組織(WAT)」でミトコンドリアの数が増えなくなり、熱を生み出す「ベージュ脂肪細胞」が作成されなくなることを明らかにしている。

研究グループはエピゲノム酵素「ヒストン脱メチル化酵素(JMJD1A)」の活性を失わせた変異マウスを作製し、代謝への影響を解析した。

すると、長期の寒冷刺激によって野生型(WT)マウスのWATではミトコンドリア増生、熱産生遺伝子発現亢進、ベージュ化組織変化が見られた。だが、変異(HY)マウスでは顕著に抑制されていた。

室温23度の飼育下でもWATのミトコンドリア密度、熱産生遺伝子発現、酸素消費量の低下からHYマウスは高度な肥満と代謝異常を現した。

一方、短期の寒冷刺激を負荷した脂肪燃焼を行う「褐色脂肪組織(BAT)」の熱産生能や個体の体温変化、組織学的所見などに両群で差はなく、BATの活性化にJMJD1Aのヒストン脱メチル化能の関与は認められていない。

また、エピゲノム統合多重解析を行ったところ、ミトコンドリア増生の鍵遺伝子である「Pgc1a/b」を活性化させる領域を特定。さらにJMJD1Aがヒストン脱メチル化活性を介して寒冷依存的にPgc1a/b発現を制御していることを解明した。

研究では、ベージュ脂肪細胞が作れなくなると個体は肥満症になり代謝異常が生じることを明らかにした。その制御にヒストン脱メチル化が関与することを明らかにしたという。酒井教授らは「肥満や糖尿病をはじめとする生活習慣病の治療や予防法への応用が期待される」とコメントしている。