農研機構は、約5000報の論文にもとづいたイネの遺伝子情報をまとめて調べられるデータベース「RAP-DB」(イネアノテーションプロジェクトデータベース)をリニューアルした。
イネは主要農作物であり、気候変動に対応した安定生産の実現に向けて、ゲノム配列や遺伝子情報基盤の重要性がより一層高まっている。農研機構が2006年に公開し、20年以上にわたり運用されている「RAP-DB」は、モデル農作物であるイネのゲノム配列や遺伝子の機能情報を提供するデータベースとして、世界中のイネ・植物研究者に広く利用されている。
今回のリニューアルでは、学術論文にもとづいて継続的に更新してきた遺伝子機能情報に加え、世界中で公開されている大規模配列データの再解析や学術論文の精査によって新たに整備した、「いつ、どこで働くのか」を示す遺伝子発現情報、品種間のDNA配列の違いを示すゲノム多型情報、さらに農業上重要な遺伝子や機能アレルの情報を統合した。研究者はこれらの情報を一つのデータベースで横断的に調べられるようになり、高温耐性、病虫害抵抗性、収量、品質などに関わる有用遺伝子をどのように組み合わせると良いかを検討しながら、品種改良を進めることができるようになる。
また、2004年のイネゲノム解読以降、イネの遺伝子機能解析は大きく進展し、収量や品質、病虫害抵抗性、環境ストレス応答などに関わる遺伝子が数多く論文として報告されてきた。しかし、近年では関連論文が急増し、人手だけで最新の知見を追い続けることが難しくなっていた。このため、農研機構は今回、重要な論文を優先的に見つけるAIによる文献選別支援システムを開発し、キュレータによる確認と組み合わせることで、RAP-DBから提供するデータの信頼性を保ちながら、継続的に最新の遺伝子情報を提供する新たな仕組みを整備した。
今回のリニューアルにより、イネ育種を支える研究基盤が強化され、高温耐性や病虫害抵抗性をはじめとする有用形質の改良に向けたスマート育種研究や新品種開発のさらなる加速化が期待される。農研機構では今後、RAP-DBを気候変動に対応した新品種開発や食料安定生産を支える基盤として、さらに強化していくとしている。