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働く人のメンタルヘルス改善を支援するアプリ「ASHARE」 北里大研究Gが開発、効果を実証(第18968号)

北里大学医学部公衆衛生学の渡辺和広 講師・堤明純教授らの研究グループは、働く人の身体活動と心理的苦痛の状態を自動で推定・可視化し、身体活動習慣の維持・変容を支援するスマートフォンアプリ「ASHARE(アスハレ)」を開発した。さらに、これを用いた無作為化比較試験を実施し、アプリの使用が働く人の心理的苦痛の低減に有効であることを明らかにした。

労働者(働く人)のメンタルヘルス問題は深刻であり、労働年齢人口の約15%がいずれかの時点で何らかの精神障害を抱えているとされている。また、明確な障害と診断されずとも、抑うつ、不安、あるいは心理的苦痛を抱えて働く人はさらに多く、休職や生産性低下のリスクにつながっている。

身体活動・運動の促進は、メンタルヘルス改善に有効な非薬物的アプローチとして知られている。また、スマホアプリ等を利用してこれらの介入を個人の端末に届け、健康支援を行うモバイルヘルス(mHealth)も注目されているが、これらはすでに何らかの症状がある高リスク者を対象とした研究や、マインドフルネス・認知行動療法に基づく心理的アプローチの検証が中心で、健康な働く人を含む集団を対象に身体活動習慣の維持・変容を支援するアプリの効果を厳密に検証する研究は限られていた。

この研究では、日本の働く人793名を対象に、アプリ「ASHARE」の効果を検証する無作為化比較試験 を実施した。アプリ「ASHARE」を3ヶ月間使用する群(397名)と、ストレスに関する冊子を読 む群(対照群、396名)の二つに、研究参加者を無作為に割り付け、その後の心理的苦痛や身体活動水準の変化を調べた。

その結果、3ヶ月後の調査で、アプリを使用した群は、冊子を読む群と比較して、心理的苦痛 の得点が0.56ポイント低下し、統計的にも有意な群間差を認めた。

また、研究参加者を研究開始時の心理的苦痛の水準で二分した解析を行ったところ、もともと心理的苦痛をあまり感じていない人でアプリ使用の効果がより大きいことが示された。もともと心理的苦痛をあまり感じていない人は、アプリ を使用した場合に対照群と比較して3ヶ月後の心理的苦痛の増加が抑えられていた。

この研究により、スマホを用いて身体活動と心理的苦痛の状態を受動的にモニタリングすることが、働く人のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」に対して有効である可能性が示された。一方で、心理的苦痛の低減効果はわずかであり、働く人が効果を明確に実感できない可能性がある。

また、アプリの使用を任意とした3ヶ月後~6ヶ月後の期間には、アプリの利用継続率が急速に下落し、6ヶ月後には心理的苦痛の低減効果は消失した。効果を維持するためにはアプリの使用継続が不可欠であることから、今後はアプリの使用継続率を高めるための施策を検証する必要がある。

さらに、アプリ使用による身体活動水準の増加は認められず、心理的苦痛が改善するメカニズムについても明確にはならなかったので、身体活動のより客観的・精密な測定を通じて、これらのメカニズムの解明が必要。研究グループは今後も、身体活動習慣の維持・変容を通じて、働く人がリズムよく穏やかな日々を過ごせるよう支援する手法の確立を目指す。