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カギは地軸の傾きと大陸配置 恐竜時代の北極域はなぜ温暖だったのか? 東大教授らが解明(第18962号)

東京大学の研究グループが約7000万年前の白亜紀後期の気候をスーパーコンピュータで再現し、恐竜時代の北極温暖化の仕組みを調べた結果、地軸の傾きの変化を考慮することで、地質学的なデータから推定された北極域の温暖な気候を従来よりよく説明できることを明らかにした。白亜紀の北極域は、大規模な氷床がないことに加え、広い陸地が存在していたことで、地軸の傾きが大きくなったときに温暖な気候になりやすいことが分かった。

この研究成果を発表したのは、東大大気海洋研究所の阿部彩子教授と東京科学大学未来社会創成研究院地球生命研究所(ELSI)の樋口太郎研究員(日本学術振興会特別研究員)(研究開始時:東大大学院理学系研究科博士課程)ら。

阿部教授らは、大気・海洋・植生を結合した全球気候モデルを用いて、白亜紀後期の気候を対象とした数値シミュレーションを実施。白亜紀後期の地球環境の再現を大きく改善させ、特に地球の公転軌道や地軸の傾きが変化する「軌道要素」に着目し、影響を系統的に調べるため、多数の数値実験を行った。

その結果、当時の北半球高緯度地域は、地軸の傾きの変化に対して敏感に応答していたことが明らかになった。この研究は、恐竜時代の温暖な気候を理解するうえで、二酸化炭素濃度だけでなく地球 軌道や大陸配置の重要性を示す成果といえる。

中生代最後の時代である約7000万年前の白亜紀後期は、恐竜が繁栄していた温暖な時代であり、北極域でも現在よりはるかに暖かかったことが化石などから知られている。しかし、その暖かさを気候モデルで再現することは容易ではなく、地質データとモデル結果の不一致が長年の課題となっていた。また、温暖な極域気候が地球軌道要素の変化によってどの程度変動していたのかは十分に分かっていなかった。

気候シミュレーションでは、約7000万年前の白亜紀後期(マーストリヒチアン期)の大陸配置を使用。また、大気CO2濃度だけでなく、これまでは現代条件を仮定していた地球軌道要素を変化させ、影響を調べた。さらに、同様の実験を現代の大陸配置でも行い、両者を比較することで、白亜紀特有の応答を解析した。

解析の結果、地球軌道要素の変動範囲を考慮することで、現代よりも温暖な白亜紀後期の極域表層温度を気候モデルで再現できることがわかった。また、北半球高緯度域での軸の傾きの増加に伴う気温上昇が、白亜紀後期の大陸配置では現代の数倍に達することも明らかになった。

白亜紀後期は、現在のグリーンランドや南極にあるような大規模な大陸氷床が存在していないことに加えて、北半球高緯度域には現代よりも広い陸地が存在していた。これらの当時の地理的な特徴によって、白亜紀後期の地軸の傾きの変化に対する気温応答が増幅されていたと考えられている。

これらの研究結果は、恐竜時代の北極温暖化の謎に対して、地球軌道要素と当時の大陸配置が重要な役割を果たしていた可能性を示すものといえる。さらに、この研究は当時の北極温暖化の理解を通じて、古気候を再現する気候モデルの信頼性に新たな根拠を与えた。今後、他の地質時代についても同様の実験や解析を行い、地質データと気候モデルを統合することで、地球史を通じた極域の表層環境変動の理解や、過去の地球環境の復元精度のさらなる向上が期待される。